風の吹くまま、日々の雑感を記録しとこうか程度の日記です。誹謗中傷や個人攻撃&個人の信用にかかわること、理解を求めない一方的なコメントは、独断で削除することもありますし、閉じることもあります。


by ende_m
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アニメーターの著作権についての私的雑感

 前回、アニメーターの生活実態調査の概要と、文化庁に提出された「アニメ産業改革の提言」を紹介した手前、アニメーターの著作権について、自分なりの研究をこころみてみた。 

 国際的に隆盛を極める日本のアニメーションの著作権の現状と、私が聞くところの、現場レベルでの著作権のあり方について考察することで、今後のアニメーションにおける、製作者、現場のクリエーター、それを利用する側の問題意識、及び問題点が少しでも浮き彫りになればと思う。



 今回の考察は、あくまで問題提起であり、法律的にも不備な点はあると思うが、アニメ業界に働く人たちの展望に少しでもつながれば幸いである。

 基本的に、著作権とは、人格権・財産権とも自然人(個人)が有する権利である。だから、幼稚園児が描いた絵も、描いた幼稚園児に著作権がある。しかし、総合芸術と呼ばれるアニメーションを含めた、映画・映像については、法律的に例外とされている。
 
 ここで、文化庁のホームページの「著作権の概要」を調べることにした。

「映画の著作物」の著作者   文化庁HP「著作権の概要」より抜粋

 「映画の著作物」については、「プロデューサー」、「監督」、「撮影監督」、「美術監督」など、映画の著作物の「全体的形成に創作的に寄与した者」が著作者となります。 原作、脚本、映画音楽など、映画の中に「部品」などとして取り込まれている著作物の著作者は、全体としての「映画」の著作者ではありません (映画をコピーするときには、これらの「部品」なども同時にコピーされるため、これらの人々の了解も得ることが必要) (第16条)。

 なお、映画の著作物については、「著作者の権利」のうち「財産権」の部分が、自動的に監督等の著作者から映画会社に移ることとされています(第29条)。

 具体的には、以下のようになります。
(a)個人が自分だけで「映画の著作物」を創った場合、その人が著作者となり、「著作者の権利」の全部(「著作者人格権」「財産権」)を持つことになります。
(b)映画会社が、社員だけで「映画の著作物」を創った場合、「法人著作」(12頁参照)となり、映画会社が「著作者の権利」の全部(「著作者人格権」「財産権」)を持つことになります。
(c)映画会社が、外部の映画監督等に依頼して「映画の著作物」を創った場合、映画の著作物については、「著作者の権利」のうち「財産権」の部分が、自動的に監督等の著作者から映画会社に移ることとされており(第29条)、このため、映画会社が「財産権」を持ち、監督等は「著作者人格権」のみを持つことになります。
 
 ということだそうだ。つまり、現行の法律では、個人で製作した映画のみに財産権があり、商業映画については、製作会社にあるということだ。
 
 現在の権利関係は、製作会社、代理店、テレビ局、原作者、出版社で、パーセントが決められ、製作委員会方式では、その出資割合で権利が配分されている。昨今では、映画ファンドで資金を集め、権利は製作会社にという企業も出始めた。
 ただし、長年の交渉や要望で、監督には二次使用権、音楽関係や声優さんには、著作隣接権が、かろうじて認められているそうだ。これによって、アニメの監督にもDVDなどの、二次使用料が支払われている。払われてないプロダクションもあるかも知れないが、原則支払うことになっている。(ただし、実演家(俳優)の映画に於ける著作隣接権は認められていない。)

 そこで、ここでは創造性の高いアニメーションについて、ゼロから創造する、キャラクターデザイナー、作画監督、美術デザイナーなどの、クリエーターの権利について考えてみようと思う。何故なら、自らが生み出したキャラクターが、世界中を駆け回る時代に入り、個人の権利意識が特に強くなっていると聞くからだ。
(オリジナル作品は特に要望が強いと聞く。原作マンガがある場合でも、アニメ用にキャラクターを描き起こすそうだ。)

 そこで、もう少し詳しく調べる為に、社団法人著作権情報センターの「実務者のための著作権ハンドブック」という本を引っ張りだして、もう一度法律的に調べてみた。(重複箇所は平にお許しを…)
 
職務上作成したものは、全て所属する会社や団体の著作物になるのか。
また、派遣社員の場合はどうなるのか。

 
 著作者とは「著作物を創作する者」(著作権法第二条一項二号)であり、会社内で作成された著作物であっても作成に携わった従業員が著作者となるのが原則であるが、一定の要件を満たした場合は、会社が著作者になることがある。

会社や団体などの法人等が著作者となる要件

① 法人等の企画に基づく著作であること
② 法人等の業務に従事する者の創作によること
③ 職務上作成されること
④ 公表するときに法人等の名義で公表されること
⑤ 契約や就業規則で、従業員を著作者とする定めがないこと
 
 と、以上の五つの条件を全て満たす必要がある。(著作権法第十五条一項)

 アニメーションに働くクリエーターの場合、①〜③までは満たされているので、著作権については、現行の法律では会社及び法人にある。ドイツのように、自然人(法人に対しての個人)にある場合とは根本的に保護の対象の違いがある。したがって、④の公表時の名義が法人等であるかによってどちらが著作者となるかが決まり、法人であれば会社や団体が著作者となり、従業員個人であれば従業員となる。しかし、契約や就業規則で従業員を著作者と認めていない現状では、全ての著作物に関しての著作権は会社にある。
 
 また、「労働者派遣事業法」に基づく派遣労働者の場合は、派遣元の指揮命令を受けて派遣先の業務に従事していることから、派遣先の「法人等の業務に従事する者」に該当されているので、著作権は派遣先にある。
 コンピューター・プログラムなどの著作物については、会社等(法人)が著作者となる条件として、公表時の名義を問題としないため、職務上作成されたものは会社(法人)となるケースが多い。
 さらに、従業員が著作者となる場合であっても、著作権は譲渡することができる権利であるため、就業規則や契約で著作権が会社にあれば、他者に売り渡すことが出来る。
 ただし、著作人格権は他者に譲渡出来ない権利であるため、従業員に残ることになる。

 会社に帰属しないフリーランスの契約者については、個人にあるが、製作会社との契約で、ほとんどのケースで権利を放棄させているようだ。対等な条件での契約が行われない現状では、製作会社の優越的地位の乱用と指摘されかねない。

 要するに、現行の法律の範囲では、アニメ会社に働くクリエーターには、著作権そのものが認められていないのが現状なのだ。では、今のアニメーションに働くスタッフの著作権が認められずにいる現状が、今後の日本のアニメーションの文化的及び産業的発展という視野にたって見た場合、果たして正しいことなのだろうか。現状を追認するだけでは、優れたクリエーターは発掘できないばかりか、衰退してしまう危惧すらある。
 今後、オリジナルアニメでさらに収益を確保することを模索するアニメ製作会社にとっても、この問題は避けては通れない課題なのではないかと考える。何よりも、伝え聞くところの、深刻な人材不足の解消の一助にもなるはずだ。

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 アニメーション製作そのものは、労働力集約型の業態であり、デジタル化されたとはいえ、分業化されたそれぞれのスタッフが携わった中から、一本の作品が生まれる。 
 実写映画が「総合芸術」といわれるように、アニメーション作品も「総合芸術」に変わりはない。しかし、アニメーションの製作現場について言えば、クリエイティブ部門に特化しているパートについても、権利の保護すらないのが現状である。
 アニメーション作品をゼロから生み出す部分を担う、キャラクター製作やクリエーターに対して、それなりの著作権保護、法体制の整備が必要と考える。

 また、会社の業務から生まれたアニメーション著作についても、キャラクターを最初に考えた人、オリジナル作品を生み出すキーマンに対しては、会社の業績に寄与した点に関して、それなりの対価を補償すべきだと考える。
 
 集合体(法人)で製作することを前提に、会社内で製作した作品についても、ライセンス実施に関する利益が発生した場合、社内従業員に対しても、社外に発注したと同等の利益の還元をすべきではないだろうか。
 
 就業規則において、職務著作についての取り扱いを明確にできればよいが、圧倒的大多数のアニメ労働者はフリーであり、またプロダクション勤務であっても契約で従事しているものがほとんどである現状にあっては、就業規則で従業者の権利が補償されていないのが実態である。

 昨今青色ダイオードの発明者へ数百億の補償金が命じられた判決が話題となったが、会社の業務の中から従業者が発明した特許によって、会社に相当な利益が生じた場合、発明者への補償金もそれなりの対価が与えられるのと同様に、アニメーション著作についても、従業者が権利を会社に引き渡すことの対価として、企業が得た利益に相応した額が、従業者に対して補償されるべきである。
 
 会社内に「実施補償金制度」や「作品評価委員会」を設け、ライセンスが実施された場合にそれなりにランク付けをして、ライセンスの数%を従業員やそこに働く契約者に還元する制度を作るのも方法の一つだと思う。

 何よりも特許発明と違い、なかなか権利の範囲を明確に分類できない著作権の問題であるが、今後のアニメ産業の発展を考える上からも、アニメーションにおけるキャラクターデザイン等の社内著作権は、避けて通れない課題ではないだろうか。
 
 知財高裁で争うような案件が出ないかぎり、現状を放置するのであれば、それこそ、日本のアニメーションは衰退していくのではないだろうか。
 
 今回文化庁に提出された「アニメ産業改革の提言」の中の、将来に向けての著作権法の改正は、まさに時流にのった現場サイドからの要望に他ならないと考える。

 長文にお付き合い下さいまして、ありがとうございました。

※ 参考文献及び資料 

 ●「実務者のための著作権ハンドブック」 社団法人著作権情報センター刊
 
 ●文化庁ホームページ 「著作権制度の概要」

 ●少々古いけど、参考までに関連記事
  業界大もうけなのにアニメーターポイ捨て 2004年8月30日 しんぶん赤旗
  ギリギリだらけの青春 やりがいも生活保障も欲しい 2004年9月19日 しんぶん赤旗
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by ende_m | 2006-02-19 20:34 | まんが